2013年 6月

赤ちゃん学会 1

2013/06/02

5月25日、26日の2日間にわたって、福岡で行われた、日本赤ちゃん学会第13回学術集会に参加しました。
日本赤ちゃん学会では、総合的な学問領域としての「赤ちゃん学」の発展と子どもの健全な発達を目的として、赤ちゃんに関する研究を行う様々な分野の研究者が研究発表、交流、啓蒙活動などを行っていらっしゃいます。医療、行動科学、工学、政策科学、育児保育科学など本当に幅広い分野の研究者が参加していらっしゃるのには驚きます。そして、育児、保育、教育の現場からの要望や疑問を研究に活かすと同時に研究成果を現場に活かすという、現場と研究者の積極的な交流を目指していることも特徴の一つだと思います。

今回、学術集会に参加したのは、もともと赤ちゃん学会には興味があったことと、当園が目指す保育を実践していらっしゃる保育園の皆さんが発表されると聞いたので、是非参加したいと思い、スケジュールはかなりタイトでしたが、思い切って参加しました。
学会という場に参加するのは初めてだったので、どんなところだろうと興味いっぱいでした。

初めての体験にポスターセッションというのがあり、研究者の方々がご自身の研究の成果をポスターという形で掲示し、そこで説明してくださるという発表でした。ですから、自分の興味のある内容のポスターを見に行くと、そこで研究者が質問に答えてくださったり、説明してくださったりするのです。

2日間に渡って行われる学会の中にラウンドテーブルと呼ばれる分科会が4つあり、そのうちの2つが保育園からの発表でした。

今回の学術集会のメインテーマは「赤ちゃんの中の社会」、私が参加したラウンドテーブルでは乳幼児の関わりや社会性という観点から発表が為されていました。

私が参加したのは、次の2つのラウンドテーブルと特別講演、シンポジウムでした。

ラウンドテーブル
「保育所における乳幼児の関わり ―リズム遊びに焦点を置いて―」
企画者:藤森 平司(保育環境研究所ギビングツリー)小川 勝利(社会福祉法人いるま保育会/昭和大学医学部薬理学講座)

ラウンドテーブル
「乳幼児の社会性 −乳児からの保育における環境による乳幼児の発達の保障−」
企画者:楢崎 雅(社会福祉法人摩耶福祉会 るんびに保育園)

特別講演
「The Development of Language as a Social Category (社会的カテゴリーとしてのことばの発達)」
Katherine D. Kinzler(シカゴ大学心理学部)

シンポジウム
「構成(論)的発達科学の新展開」
企画者:長井志江(大阪大学大学院工学研究科)・高橋英之(玉川大学脳科学研究所)・浅田稔(大阪大学大学院工学研究科)・國吉康夫(東京大学情報理工学系研究科)
発表者:國吉康夫(東京大学情報理工学系研究科)・熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術研究センター)・守田知代(自然科学研究機構生理学研究所統合生理研究系)・
浅田稔(大阪大学大学院工学研究科)
討論者:Katherine Kinzler(シカゴ大学心理学部)

鉄棒

2013/06/01

数日前から年長児の女の子を中心に、鉄棒の上に座る事がちよっとしたブームになっていました。
女の子はすいすいと簡単に座って、手もはずしてぴょんと前に降りる事もできます。
その端でその様子をじっと見ている年長児の○○君もいました。

○○君は鉄棒に座る女の子をずっと憧れのまなざしで見ています。どうしたら座れるのか手順を聞いてトライしますが全くできません。何度も練習して片足が上がるようになっても、両足ともになると恐怖心から体重が後ろに傾き、うしろで見守っている職員にもたれかかってしまいます。

まわりの女の子も丁寧に教えたり、はげましたり、中には「○○君は男やのになんでできひんの?」と聞いてくる子もいました。
○○君は少しでも体が柔らかくなるためにと、家で前屈したり…雨が降ると「鉄棒できひんな〜」と残念がったりしてました。
そしてとうとう、1人で座る事ができたのです。
その時の喜びようといったらうれしくてぴょんぴょん跳び跳ねて、見守ってくれた先生に何度も見せ、お迎えに来られたお母さん方にもみせていました。

自分の力でできたという自信と次への意欲につながったのですね。
○○君は今、逆上がりの練習をしています。

だって、かわいそうやもん!

2013/06/01

おいしく、楽しく食事をいただくための大切な要素の一つは、いろいろな人と共に食事をするということです。いろいろな人と食べることで、どうして食べると良いのか、食器やお箸などはどう扱うのか、いろいろなことを見て学んでゆきます。家庭であれば、両親、兄弟、祖父母などと食事するのが良いでしょうし、保育園なら、発達の異なる異年齢の子どもたちに大人が加わって食べると良いと思います。そのなかで、みんながおいしそうに食べているのを見て少しずつ食べられるようになってゆきます。みんなで、「おいしいね!」と言って食べることが大切なのです。

もちろん100%そうなるわけではありません。苦手な食べ物や嫌いな物が一つや二つあってもそれほど気にすることはないと思います。アレルギーとまで言わないにしても身体に合わないものだってあります。ですから当園では嫌いな物は盛りつけてもらうときにほんの少しにすれば良いと言っています。

食べるという営みは自分のいのちをつなぐために他のいのちをいただくということです。他のいのちをいただかないと生き続けることはできません。子どもたちにも機会があるごとにそんなことを伝えています。どこまで理解しているのかよくわかりませんが、先日もそんな話をしていたら、5歳児の子どもたちが「いのちってなに?」「いのちってどこにあんの?」と質問してきて少し戸惑いました。いのちは、私たちがこうして生きているということ、どんなものでもそれぞれに役割を持って存在している。いのちはあらゆるところにみちあふれていると伝えたかったのですが、どう伝えたら良いものか迷いました。

私が昼食を食べ始めるのが遅くなったある日、5歳児の女の子がゆっくりと食べていました。実はその子はお肉が少し苦手で、おかずに入っていた鶏肉に苦戦していたようでした。その子は自分が苦手なことがわかっていて、鶏肉は少しだけにしてもらっていました。それでも、食べにくそうだったので、「大丈夫?」と聞くと、「お肉食べると、おぇー!ってなるねん」というので、「どうしても無理なら残す?」と聞きました。するとその子は、「にわとりさんかわいそうやもん。」といって、本当に少しずつ少しずつ、口に運ぶのです。そのことばを聞いて、にわとりのいのちを活かすために、食べられない鶏肉を一生懸命口に運んでいる姿を見たら、胸の奥から熱いものがこみ上げてきました。

「どうしても無理なら残す?」と聞いた自分の軽率さを反省し、子どもの心の深さに手をあわせました。

スクロール