ある日の夕方の出来事です。
3才のKちゃんがコガネムシを大事そうに握っていました。
しかし、コガネムシにとってKちゃんの手は少し小さそうだったので
むしさん、逃がしてあげない?と提案してみることにしました。
一瞬、さびしそうな表情を浮かべたKちゃんでしたが、すぐに笑顔をとりもどし
「うん!むしさん、葉っぱがすきやねんで」と言って小さな落ち葉を見つけてきてその上にコガネムシを上手にのせ、そのまま園庭にある木の下にそっとおきました。
コガネムシは右後ろ足を不自由しているようで何度も何度もひっくりかえっていました。
その度に頑張って起き上がるコガネムシの姿を二人でじっと見守りました。
するとKちゃんが「はやく、むしさんのおともだち、来はるといいなぁ」と言いました。
そうやなぁ、とわたしが返事をすると、先ほどまでの真剣な表情は消え
「おはよう!って言って来はるんやで!」とKちゃんはとても柔らかな表情で言いました。
「Kちゃん、ありがとう。むしさんもきっと喜んではるよ。」とわたしが言うと。Kちゃんは嬉しそうな笑顔を浮かべ
「う~~~~っっ!」と叫びながら去っていきました。
むしさんを想って変わるKちゃんの色々な表情に、とても心があたたかくなりました。