園長ブログ

それぞれの世界

2013/11/27

認知症では、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などの中核症状が原因で、様々な行動・心理症状(周辺症状といわれることもある)が起こります。行動症状の一つとして徘徊と呼ばれる行動があります。「徘徊」を辞書で引くと、どこともなく歩き回ること。ぶらつくこと。(広辞苑)とあります。認知症で徘徊しているというと、あてもなく歩き回っているように感じますが、歩いている本人には本人なりの理由があるそうです。見当識のしょうがいのために、買い物に出かけたけれどもお店の場所がわからなくなったり、家への帰り道がわからなくなる、いわば迷子になっていることがあります。また、自宅にいるのに「家に帰ると」いって出て行ってしまう。よくよく話を聞いてみると、家というのは、若い頃に住んでいた家だったということがあるそうです。このように記憶があやふやになって、本人が認識している現実が実際と異なることで、起こる徘徊もあるそうです。歩いて行けるはずもない遠いところまで歩いて行こうとする人もいると聞きました。

そういえば、鞍馬でも遠くから来られたお年寄りが、保護されたという話を聞いたことがあります。

徘徊は、周りの人から見ると奇異な行動かもしれませんが、本人の中にはその人の現実、その人のとらえ方、その人の世界があり、その人の理由があるのです。
私たちはどうしても自分自身の感覚で捉え、他の人も同じように世界を捉えていると思い込みがちです。

ですから、その人の感じ方や世界があるということを考慮せずに、自分の価値観や都合だけで考えて、それを誰にでも当てはめようとしてしまいます。もちろん、相手と全く同じように感じる事はできませんが、できる限り想像を巡らすことはできそうです。

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